夏の味覚を食べないと【京都・鱧食体験記】
「そうだ、鱧、食べないと……」
7月1日、昼時。昨日、水無月を食べて、これで暑い夏を越せるぞと安堵した矢先のことだった。脳裏に過ぎったのは、ある重大な抜け落ち。まだ、今年の鱧を食べていない。
訪日外国人の方々に、日本の、いや京都の季節の楽しみ方を伝えるコンシェルジュである私が、旬の料理を食べずにいられるなど、断じて許されることではない。これはもう、私個人の食欲を満たすだけでなく、文化を伝える者としての責務だ。
ふと気づけば、足はもう、オフィスを出てお蕎麦屋さんへと向かっていた。
オフィスから徒歩5分。「めん房やまもと」へ
オフィスからわずか徒歩5分。路地裏にひっそりと佇む「めん房やまもと」は、地元の人々に愛される老舗の蕎麦屋だ。派手さはないが、どこか懐かしい佇まいが、訪れる者の心を落ち着かせる。
暖簾をくぐると、からりとした空気と出汁の香りが鼻腔をくすぐる。落ち着いた店内に、昼食を求める人々の声が控えめに響く。今日の私には、鱧という確固たる目的がある。メニュー表を開くと、季節限定の文字が目に飛び込んできた。
「あった。夏季限定メニューの『ハモ天ぷら蕎麦』!」
迷わず「冷たい方で」と告げる。この時期の蕎麦は、やはりキリッと冷えたものがいい。出汁の風味を存分に味わいつつ、喉越しも爽やかだ。期待に胸を膨らませ、お腹を空かせて待つこと数分。
アツアツ、サクサク、これぞ京都の夏
運ばれてきた「ハモ天ぷら蕎麦」を前に、まずはその姿を眺める。食欲をそそる佇まいに、期待が高まる。
揚げたての鱧の天麩羅は、見るからにアツアツ、そして纏う衣の薄さから伝わるサクサク感。一口食べれば、衣は軽やかに砕け、ふっくらとした鱧の身から、じんわりと上品な旨味が広がる。これだ。京都の7月は、こうじゃないと。この味覚に、心が満たされていくのを感じる。
もちろん、蕎麦もまた格別だ。ひんやりと締まった蕎麦は、つるりとした喉越しで、蕎麦本来の香りが立つ。そして、じんわりと身体に染み渡る出汁。この絶妙なバランスが、たまらない。ピリリと辛みのある大根おろしが良いアクセントになり、食欲をさらに刺激する。
あまりの美味さに、気づけばズバッと一気に啜り、あっという間に完食してしまった。ご馳走様でした!!
夏は始まったばかり
店を出て、四条通へと足を進めると、祇園祭に向けて提灯の取り付け工事が進められているのが目に入った。この提灯を見ると、ああ、今年も本格的に7月が始まったのだなと実感する。
夏の始まりを告げる鱧。今日の「ハモ天ぷら蕎麦」も最高だったが、次は鱧鮨もいいな、とすでに次の食への思いを馳せながら、オフィスへと戻った。
・・・ということで、今回は孤独のグルメっぽくブログを書いてみました。京都では、祇園祭は「鱧まつり」とも呼ばれるほど、京都人にとって7月はまさに鱧の季節なんです。お蕎麦屋さんでも期間限定のメニューとして、鱧天そばを出されたりします。せっかくですので皆さんもぜひ、京都の旬の味覚を味わってみてください!
P.S. 3日後には、このブログを書いているとまた鱧が食べたくなり、お昼に本家尾張屋さんの鱧せいろも食べに行ってきました。改めて、夏が始まりましたね。

キャッチコピーは “陽気なスナフキン”
道端で困ってそうな外国人に声をかけがち