京都のインバウンド市場の今!2025年の5月のインバウンド市場の現状レポート
2025年4月の訪日外客数は390万人を超え、単月として過去最高を更新しました。2019年を超える水準が継続しており、1〜4月累計では1,444万人と、依然として高水準で推移しています。観光回復の勢いは強く、今後も継続的な増加が見込まれます。
2. 国別訪日外客数の最新動向(2025年4月)
2025年4月の訪日外客数は、前年同月(約304万人)と比較して約86万人増、28.5%の伸び率で過去最高を記録しました。国別では中国が首位を奪還し、韓国・台湾・米国・香港が続きました。これで15ヶ月連続で、同月の過去最高記録を更新しています。
3. 訪日中、何に“困った”?最新アンケートから見えるリアルな課題
観光庁が発表した『訪日外国人旅行者の受け入れ現場設備に関するアンケート調査(2026年度版)』では、訪日滞在中に関する様々なアンケート調査が行われており、本レポートではその中から「訪日中に困ったこと」に焦点を当てます。
以下のような具体的な回答が挙げられました:
ゴミ箱の不足や観光地の混雑、入国手続きの課題は、訪日外国人の増加に伴って顕在化しているインフラ課題といえます。とくにゴミ箱に関しては、日本の街中での景観保持や防犯意識の高さゆえに設置数が限られている事情があり、訪日客には「どこに捨てていいかわからない」という戸惑いが多く見られます。同様に、観光地での混雑や入国時の長時間待機は、旅行体験そのものへのストレスとなり、改善には行政や地域単位での抜本的な対応が求められます。また、2位と4位に関しては、コミュニケーションに大きく関わる部分で、約25%にも上っている結果となります。
4. "施設スタッフとのコミュニケーション"が困難だった場所は?
「施設スタッフとのコミュニケーション」で困ったと答えた訪日客の中で、都市部・地方部ともに最も多かったのが「飲食店」でした。都市部では54%、地方部では49%が「飲食店で困った」と回答しており、飲食店における言語対応の課題が明確になっています。
特に飲食店は、観光客にとって“最も身近な現地体験”の一つであり、注文や会計といった基本的なやりとりにおいて、言語による不安や戸惑いが顕在化しやすい場面です。実際、「言葉が通じなかったが、スタッフが笑顔で対応してくれたのが印象的だった」「Google翻訳やカメラアプリを一緒に使ってくれた」「身振り手振りで一生懸命伝えようとしてくれた」など、言葉が通じなくても前向きに受け止められた事例も多く寄せられています。
5. 多言語表示がわかりにくい場所も「飲食店」が最多
「多言語表示の少なさ・わかりにくさ」に関する困りごとでも、飲食店が都市部・地方部ともに最多(33%)を占めました。具体的には、レストランやカフェのメニュー内容の説明がわかりづらい、手書きメニューが翻訳アプリで読み取れない、といった声が多く挙がっています。
こうした課題は、店舗側の情報提供のあり方にも深く関わっています。施設スタッフとのコミュニケーションや案内表示の言語面に関する課題は、比較的店舗・施設側の工夫や施策によって改善が可能な領域です。例えば、簡易的な英語表記の追加や、写真・アイコンを使った視覚的メニュー表示、またはQRコードによる多言語案内の導入など、小さな工夫の積み重ねが大きな安心感を生みます。
今後さらにインバウンド需要が高まる中で、飲食店でのコミュニケーション体験は「日本の印象」を左右する重要な要素です。たとえ小規模な店舗であっても、“伝わる仕組み”を整えることが、訪日客から「また来たい」と思ってもらえる店づくりの第一歩になるでしょう。
6. 京都のインバウンド市場(宿泊率の推移 2025.4)
京都市内の主要ホテルにおける宿泊実績も、2025年4月は好調な結果を示しました。総延べ宿泊者数のうち外国人比率は前年同月比で18.2%上昇し、216,430泊を記録。これは2014年の統計開始以降、単月で過去最高となりました。
宿泊施設の需要は引き続き高く、インバウンド回復の波が京都にも確実に届いていることが見て取れます。大阪での関西万博の影響も重なり、今後も稼働率は堅調に推移する見込みです。
さいごに
今回のレポートから見えてきたのは、観光客の増加がもたらす物理的なインフラ負荷と、言語・情報伝達面での問題です。とくに飲食店における「スタッフとの言語コミュニケーション」や「メニューの多言語表記」は、訪日体験の満足度に直結する課題です。
一方で、これらはテクノロジーや発信の工夫で比較的改善しやすい領域でもあります。翻訳アプリや画像付きメニュー、QRコードの導入、GoogleビジネスプロフィールやTripadvisorへの正確な情報掲載など、小さな取り組みが大きな安心感と評価につながります。
これからのインバウンド対応は「伝える努力」そのものが“おもてなし”とされる時代。満足度向上の鍵は、選ばれる店舗・施設であるための情報整備と、ストレスを感じさせない接客環境の構築にあるといえるでしょう。
▼ 出典
訪日外客統計 月次報告/日本政府観光局(JNTO)
日本の観光統計データ/日本政府観光局(JNTO)
京都市観光協会データ月報/京都市観光局
インバウンド消費動向調査/観光庁
『訪日外国人旅行者の受入環境整備に関するアンケート調査(2026年)』/観光庁