日本人のデザイナーが訪日外国人向けのデザインで気をつけること
こんにちは、Sharing Kyotoデザイナーの安井です。
わたしたちは、訪日外国人観光客向けのWebサイトのデザイン制作からSNS広告、施設のリーフレット、飲食店のメニューといった紙媒体のグラフィックデザインを得意としています。
日本文化に精通したネイティブスタッフの知見と、私たちが培ってきた外国人向けデザインに関する専門性との相乗効果が、他にはない付加価値を生み出しています。
▼制作事例
臨済宗大本山妙心寺 大雄院 さま - 420年以上にわたり禅の教えを護り続ける寺院の英語サイトリニューアル
湯豆腐嵯峨野 さま - 嵐山の湯豆腐店の外国人向け店舗ツール
らぁ麺 とうひちさま - 京都の人気ラーメン店のグランドメニューと召し上がり方ツール制作でUX改善 及び訪日客向け対応
今回はデザイン面にフォーカスし、日本語と英語で異なる装飾の意味や感覚の違いに注目しながら、「伝わりやすく、自然で、心地よいデザイン」を実現するために私たちが大切にしているポイントをご紹介します。
欧文専用フォントを使う
日本語フォントは、漢字やひらがな、カタカナなど日本語の美しさを最大限に引き出すために設計されていますが、そのまま英語のタイポグラフィに転用することにはいくつかの大きな問題があります。
まず、日本語フォントの英語(欧文)部分は後付けで作られていることが多く、バランスや可読性に欠けることがよくあります。日本語との調和を重視してデザインされたアルファベットは、文字の形状が一般的な欧文フォントとは異なり、英語としての視認性が低下します。
その結果、外国人ユーザーにとっては「見慣れないフォント」と映り、違和感や読みにくさを感じさせてしまいます。これは、情報の信頼性やデザイン全体の完成度にも悪影響を与える可能性があります。
このような理由から、英語で情報を発信する部分には、英語専用の欧文フォント(例:Helvetica、Futura、Garamondなど)を使用するのが基本ルールです。言語ごとの特性を理解し、視覚的にも心地よく伝わるデザインを意識することが、国際的なデザインにおいては欠かせません。
英語に翻訳されることを前提としたデザインを!
英語のデザイン制作でも大抵の場合、クライアントは日本の方なので、まずは日本語でデザインを作成してOKを頂いてから、英語に翻訳します。 そのときの注意点として以下があります。
1. 日本語フォントに頼りすぎない
日本語版ではユニークで魅力的な日本語フォントを使用しても、英語に置き換えた途端にその世界観が崩れてしまうことがあります。
デザイン全体のトーンが英語でも維持できるよう、フォント選びは慎重に行いましょう。欧文専用フォントの選定も重要です。
2. 英語は文字数が増えることを想定する
日本語に比べて英語は約1.5倍〜2倍の文字数になる傾向があります。
日本語でテキストエリアをギリギリまで使ってしまうと、英語に変換したときに入りきらなくなり、デザインの再調整が必要になることも。
テキスト周りには余白を多めに設け、文字数が増えても崩れない設計を心がけましょう。特にレスポンシブデザインや印刷物ではこの視点が重要です。
3. 縦書き表現に注意
縦書きは日本の雰囲気を演出したり、アクセントに効果的な表現手法ですが、英語では基本的に使用されません。
日本語で縦書きを多用すると、英語化の際にレイアウトが大きく変わる可能性があります。
日本語らしさを演出したい場合でも、英語版ではどのように見えるかを事前にシミュレーションしておくことが大切です。場合によっては、初めから英語ベースでデザインを提案するのも有効です。
4. 段落は左揃えが基本
日本語では均等配置(ジャスティファイ)が一般的に使われる場面もありますが、英語では左揃え(left-aligned)がスタンダードです。
均等配置にすると、英単語間のスペースが不自然に広がり、読みにくくなる原因となります。
読みやすさと自然さを重視するなら、英語テキストは左揃えを基本としましょう。
住所の読み間違いを防ぐ表記の工夫
本語の住所は「郵便番号 → 都道府県 → 市区町村」といった順で表記されるのが一般的ですが、英語圏ではこの順番が逆になります。
また、地名の読み間違いにも注意が必要です京都には「上ル(あがる)」「下ル(さがる)」といった独特の表現や、読みが難しい町名が多くあります。また、建物内のテナント情報なども、日本人には通じても外国人には理解が難しい場合があります。
私たちは、「地元だから読めているはず」という思い込みに頼らず、常に客観的な視点で情報を確認することを大切にしています。特に住所の読み方については、必ず郵便局のサイトで正しい情報をチェックし、誰にとってもわかりやすく、正確に伝わる表記を心がけています。
日付や時間の表記ルールを守る
英語では「May 29, 2025」や「1:00 PM – 3:00 PM」が一般的です。記号や並び順も文化により異なるため、ターゲットの国に合わせた正確な日付・時間表記は、外国人ユーザーの安心感につながり、トラブルや誤解を防ぐためにもとても重要です。
・日付の表記 国による違いに注意
- 表記例
- May 29, 2025
- 29 May 2025
- 2025-05-29
- 使用国
- アメリカ、カナダ
- イギリス、オーストラリア
- 国際規格(ISO)、一部の欧州、アジア
- 読み方(英語)
- 月→日→年(Month-Day-Year)
- 日→月→年(Day-Month-Year)
- 年→月→日(Year-Month-Day)
日本語では「2025年5月29日」が一般的ですが、英語圏では**月を先に書く表記(例:May 29, 2025)が基本です。
ただし、イギリス式では日が先に来る(例:29 May 2025)**ため、ターゲット国に合わせて調整する必要があります。
・時間の表記 24時間制と12時間制
- 表記例
- 13:00–15:00
- 1:00 PM – 3:00 PM
- 使用国
- 日本、フランス、ドイツなど
- アメリカ、イギリスなど
- 特徴
- 24時間制(ビジネス用途に多い)
- 12時間制 + AM/PM が必要
英語圏では、12時間制+AM/PMの併記が一般的です。特に観光や接客分野では、24時間制に慣れていない訪問者も多いため、午後1時を「13:00」ではなく「1:00 PM」と書くのが自然で伝わりやすくなります。
・記号にも注意
日本語では「〜」や「・」を時間表記に使うことが多いですが、英語では「–(ハイフン)」が一般的。
×「1:00〜3:00」
○「1:00 PM – 3:00 PM」
「年/月/日」といった表記も「/」の使い方が国によって意味が異なるため、スラッシュ表記を避けて英語で月名を使う方が無難です。
×「5/6/2025」 → 米国では5月6日、英国では6月5日と解釈される可能性あり
○「May 6, 2025」
外国人向けのデザインには、言語だけでなく文化や表記の違いを深く理解した上での配慮が欠かせません。住所や日付の表記、フォント選びや情報設計など、細部に対する意識が、読み手にとっての「伝わりやすさ」と「信頼感」につながります。
私たちは、単なる翻訳対応ではなく、多言語環境で自然に機能するデザインを、戦略的に構築することを得意としています。インバウンド対応や英語版ツールの制作をご検討の際は、ぜひ一度お問い合わせください。

街をお散歩中のワンちゃんから目が離せません。