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2024.05.02

おせっかいのススメ - What would you do? -

おせっかいのススメ - What would you do? -

午前9時過ぎ。地下鉄烏丸御池駅。通勤ラッシュの人混みをかいくぐり、東西線から改札階へと上がり、南改札口への長い通路へ。今日も1日頑張るぞーと思いながら歩いていると、南改札口の前でスマホと標識を見ながら右往左往している外国人ご夫婦が1組。見た所でかいスーツケースを引いているので、観光客で間違いなさそう。今から烏丸線に乗って京都駅にでも向かうのだろうか。京都駅なら左側だよーと念じながら近づいていくも、そんな念力は通じるわけもなく。。ご夫婦はスマホと標識の睨めっこを続けており、なかなか困っているご様子。
うーん、どうもお2人のことが気になる。出勤時間までにはまだ少し余裕があるし、駅名を聞いて教えるだけなら1分もかからないはず。・・・さて、あなたならどうする?

はじめまして!Sharing KyotoのTravel ConciergeをしているShinです。
突然ですが、みなさん道端で困っている外国人をみかけた時、自分から声をかけにいきますか?
私はというと、積極的に首を突っ込んで「どうしたの?」と声をかけに行ってしまうタイプです。
コロナ禍が明け、訪日外国人でごった返す京都。最近では毎日のように、駅や道端で困っている外国人を見かけますが、そんな時にはフラっと声をかけ、待場の道先案内人を買って出ています。

こういった話を社内でするとなかなか驚かれますし、皆さんに驚かれる気持ちも分かります。
では、なぜこうしたことを積極的に行っているかというと、もちろん今の仕事の影響もありますが、何より自分が旅行をしている際に、現地の人に助けてもらった経験が沢山あるからです。(学生時代からバックパッカーとして、約40カ国ほど旅してきました。)

あの時、あの町で助けてもらった名も知らぬ方々へのお礼の代わりに、自分も同じ行動をしてお返ししているつもりです。Pay it forwardってやつです。

旅行

因みに、困っている人に声をかけてみるのって実はそんなに難しい事ではないんです。たとえ英語が話せなくても、簡単な単語とジェスチャーで意味は伝わったりします。むしろ、英語が話せない中でも助けようとしてくれた心意気に感謝されることだって大いにあります。
なので、皆さんも臆せず声をかけてみてください!

と、いきなり言われても、じゃあ明日からどんどん声をかけられるかというと難しいですよね。
そこで、今回はこのブログの場を借りて、私が海外で現地の人に助けていただいたエピソードを紹介しながら、こんな些細なことでも旅行者にとってはありがたいんだよ!という気持ちを感じていただき、皆さんの心理的ハードルをグッと下げるような話をしたいと思います。

ーーー
余談ですが、アメリカの人気テレビシリーズ「What would you do?」をご存知ですか?
社会実験形式の番組で、見知らぬ人同士の口論や違法行為に遭遇した通りすがりの人々の反応を観察するような番組です。

▼ Youtube Chammelもあるみたいです。
https://www.youtube.com/channel/UCwdo8-3UrfZ9scHPl0m4Ysg

颯爽と現れるヒーロー、ネタバラシ後のインタビューでのHumanism溢れる回答など、「「「America!!」」」という成分が詰まっていて面白いです。

① セルビア:ベオグラードのバスターミナルで

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ソフィアからベオグラードまでの長距離バスでの話。お昼過ぎにソフィアを出発し、途中何度かサービスエリアや中継地のバスターミナルで小休憩を挟みながら、夜遅くにベオグラードに着く予定。日も沈み夜がやってきた頃、ニーシという街の小さなバスターミナルに到着しました。今回は少し長めの休憩になる様子。ベオグラード着が夜遅くなので、このタイミングで、夜ごはんと現地両替を済まそうと思い、ターミナルの外側に見える飲食店らしき看板の方に向かっていきました。
何を食べようかなー、両替できるところあるかなーと考えながらお店の方に近づいていくと、少し困ったことが。なんとバスターミナルの敷地を区切るように、胸辺りまである柵がぐるりと張り巡らされていました。どこかに出口が無いかと辺りをキョロキョロ探しますが、どうやら近くにはなさそう。

「ん?これはどこから出られるんだ?そもそも乗車している人はターミナルから出られないのかな?んー、困った。。」

そう思っていた時、後ろから声が聞こえてきました。振り返ると、同じバスに乗っていたお姉さんが優しいほほえみを浮かべて立っています。

「この右側に金具がついている柵があるの。ちょっと分かりづらいんだけど・・・ここね。ここから自由に出入りできるよ。バスは今、ニーシまで/二―シからの乗客を入れ替えてるので、まだ30分ぐらいは時間がかかるかな。○○時までに戻ってきたら大丈夫だよ!」

なんて優しい人!こちらの気になっていることをサラリと解決してくれました。そのお姉さんのおかげで、食事、両替、ちょっとした街歩きまですることができ、素敵な思い出を作ることが出来ました。ベオグラードに到着しバスから降りた時には、ニコッとほほほえみ、手を振ってくれた姿は今でも忘れません。

② サウジアラビア:ファーストフード店で

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サウジアラビアのファストフード店での話。お昼ご飯を買いに、現地で知り合った男の子にオススメされたファストフード店へ。なんでも世界一のフライドチキンが食べれるんだとか。
店に入るとカウンターの前には物凄い人だかり。全員が店員さんに何かを渡そうと必死の様子。しばらく観察していると、どうやらレジで注文しお会計を済ませた後、カウンターに移ってレシートを店員さんに渡すと自分のメニューを作ってくれるシステムらしいという事がわかりました。そして、お会計順に進むと言うわけでもなく、店員さんが受け取ったレシート順に準備がされる様子。

「なるほど、分かった」

まずはカウンターの隅っこにあるレジカウンターで注文とお会計。レシートをもらって受け取りカウンター?の方へ。隅っこの方からじわじわと店員さんに渡す順番を伺ってみますが、なかなか全体のリズムに乗れず、注文を受け取ってもらえません。

「うーん、困った。郷に入っては郷に従え。多少強引にでも正面突破するか」

そう思っていた時です。隣のおじさんがこちらを向いて、人差し指をくいくいと合図を送っています。顔を見ると、それを貸しなと目で言っている様子。大人しくレシートを渡すと、周りと店員に向かって一言。

「この子の先に作ってあげて。ずっと待ってるみたい」(雰囲気翻訳)

その一言で周りのお客さんも気付き、無事に店員さんに私のレシートが渡り、しばらくすると注文したメニューが出てきました。

「ありがとうおっちゃん!」

おじさんに感謝をしつつ、テイクアウトの容器を持ってほくほく顔でホテルに戻りました。もちろん、その時のチキンが世界一美味しく感じたのは言うまでもなく。

③ モロッコ:フェズの旧市街、ブージュルード門の前で

モロッコ ブージュルード門の前

フェズの旧市街の入口、ブージャフード門前での話。旧市街内の散策もひと段落つき、そろそろ駅に戻らないと次の街への列車に乗り遅れてしまう頃合い。旧市街の入口にあたる門まで戻ってきました。

門を出ると少しだけ開けた広場となっており、通りを囲むようにしてカフェと、カフェの客引きの兄ちゃん達がズラリ。見るからに観光客と言うこともあり、瞬く間に囲まれ、一斉に営業合戦が始まります。

「うちの店でミントティーでも飲んできなよ!」
「いや、うちのフレッシュジュースが良いよ!」
「いやいや、うちのオレンジジュースが1番だね」

やいのやいのセールストークが続きますが、駅に行かないといけないのでと断り、駅までのタクシーを探します。門の前のスペースにはひっきりなしに車がやってくるので、簡単に捕まえられるだろうと思っていたのですが、これが大変。まずどの車がタクシーなのかはパッと見では判断がつきません。普通のタクシーなのか、乗り合いタクシーで他の客を待っているのか、個人の車なのかが分からず、声をかける相手を見極めるのも一苦労。また、タクシーだとしても、地元の人が次々に捕まえて乗り込んでいくので、そのスピードに負けて期を逃し続けてしまいます。

「うーん、困った。そろそろ列車に間に合わない可能性が出てきたな。」

いよいよ本格的に焦り始めた時、さっきの客引きの兄ちゃんの1人が声をかけてくれました。

「どうしたの?何か困ってる?」
「駅までのタクシーを探してるんだけど、捕まらなくて」
「OK、ちょっと待ってね。・・・◯✖️△!」

振り向きざまに広場に向かって叫ぶと一台の車がスルスルとやってきました。

「よし、これに乗っていきな。じゃ、旅行楽しんでねー」

こちらからの感謝の気持ちを伝える間もなく、彼は自分の持ち場のカフェに戻っていきました。(海外の客引きはかなり強引に来られるのでちょっと疲れてしまいますが、こういう優しさを持ち合わせている方が多いのも、なんだか憎めない所です)きっとあのまま客引きの兄ちゃんが気付いてくれなければ、もっと時間がかかっていたことでしょう。彼には本当に感謝しています。

おせっかいのススメ

以上は私が旅先で助けてもらってきたエピソードのほんの一例です。
おそらく、現地の人からすれば人を助けたなんて全く思っておらず、ちょっと気になったから声をかけてみた程度の事だったと思います。それでも、異国の地で右も左も分からない自分からすると、本当にありがたい気持ちで一杯でした。
そして、こうしたちょっとした困りごとは私が住む京都でも、身の回りで沢山起こっていると思っています。こうした経験が、おせっかいながらも、私が困っていそうな人を見かけたら、積極的に声をかけるようになったきっかけです。そこまで大きなこと、ヒーローになるようなことを目指さなくてもいいんです。こちらからすると些細なことでも、気が向いた時、ちょっと気になった時、気負わずに声をかけてみてください。


・・・とはいっても、初めの1歩目が難しいですよね。
また、声をかけて微妙な反応をされたらどうしようと不安にもなりますよね。
そんなあなたに向けて、最後に1つだけアドバイス。

優しい表情で「May I help you?」これさえ言えればALL OKです。

ポイントはこちらがおどおどしないこと。声をかける際には緊張からついつい顔がこわばってしまいがちですが、困っている相手に対して、こちらも困っている雰囲気を出してしまうと、お互い気を使ってしまい、どこか気まずい雰囲気になるかもしれません。
もっと気軽に、友達に話しかけるようなイメージで「どうしたの?」と聞いてみることをお勧めします。その後の英語の対応が多少拙くても、あなたの為に何か手助けしたいという気持ちはしっかり伝わりますし、きっとお互いに優しい気持ちになれると思います。

ぜひ、機会があれば試してみてください!

この記事が、誰かの背中を押し、どこかで誰かを笑顔に出来るきっかけになればとても嬉しいです。京都中に皆さんのやさしさの輪を広げていきましょう!
レッツおせっかい!

Writer
矢野
矢野 晋
Shin Yano
Travel Concierge
旅好き、本好き、話好き。
キャッチコピーは “陽気なスナフキン”
道端で困ってそうな外国人に声をかけがち。